What if 〜Parallel&Playful Story〜



ルーナのシンデレラ? ...02

【注意事項】
※リセット登場キャラによるパロディとなっております。本編とは若干都合よく設定が違っていたりします。
※かなりアホ話です。苦手や不快に思う方は閲覧にお気をつけ下さい。




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 むかしむかし、あるところにルーナというそれはそれは美しい少女がおりました。
 少女には二人の兄と、一人の姉がおりましたが……
「ルーナ!」
「はい、アマリー姉様」
「んもーー! どこにいってたの! 姉様の傍を離れちゃだめって言ったでしょう?」
「ご、ごめんなさい姉様」
「ルーナどこだ!」
「はい、ジーン兄様」
「どこに行ってたんだい? 心配したんだよ、おいで」
「すみませんでした、兄様」
「ルーナァ!」
「はい、ユアン兄様」
「お土産だよ。ほら可愛らしい小箱だろ?」
「ありがとうございます、兄様」
 と、まぁこのように少女の兄姉(きょうだい)たちといえば、




 とてつもないシスコンで有名だったのです。




 そんなある日のこと。
 お城でリュシオン王子の誕生日を祝う舞踏会が開かれることになりました。そして少女の家にも当然のようにお城から招待状が届いたのです。
「わぁ! 舞踏会なんて素敵!」
 ルーナは嬉しそうに頬を染めて言いました。しかしそれを聞いた兄姉たちは顔を(しか)めて一斉にまくし立てました。
「ルーナが出席するなんて、危ないから絶対だめ!」
「そうだよ、だめだめだめ」
「どうしてですか? 兄様、姉様?」
「どうしてって、悪い虫がいっぱいいるからよ!」
「ああ、たちの悪い虫がつく」
「舞踏会なんていったら、虫けらいっぱいいるもんね」
(そんな恐ろしい虫が……)
 確実に何かが間違ってルーナの中に認識されたのでした。




 しかし舞踏会当日。
 誰もいなくなった家に一人留守番のルーナは、寂しくて悲しくて、ついにはシクシクと泣き出してしまいました。
 すると突然風が吹き、次の瞬間には彼女の前に一人の美しい精霊が立っていました。
「誰じゃ、そなたを泣かしたのは」
風姫(ふうき)さん」
 それはルーナと仲良しの精霊でした。ルーナが事情を話すと、精霊はにっこり笑ってこういいました。
「妾に任せておけ」
 そう言って精霊が片手を振ると、ポンッとルーナの目の前に、エプロンをして右手にお玉を持った少年が現れたのです。
(なぜ、お玉……)
 ルーナの視線を感じると、少年は赤くなって叫びました。
「夕食の準備中だったんだよ!!」
 どうやら彼は精霊に無理矢理連れてこられたようでした。
「フレイル、ルーナを舞踏会に行けるようにしろ」
「は?」
 精霊の言葉に少年は嫌そうに顔を顰めます。
「……嫌なのか? ほぉ……い、や、なのか?」
「……わかったよ(怯)」
 どうやら精霊の脅しが効いたようです。
 少年はルーナの前に立つと、持っていたお玉を彼女の顔の前でくるくる振りながら呪文を唱えました。
「ララルルリリン、ホニャニャンニャン」
 するとどうしたことでしょう。ルーナは一瞬にしてお姫様に大変身したのです。
「わぁ……」
 自分のドレス姿に嬉しそうなルーナを見て、精霊も満足そうに頷いています。そんな風にはしゃぐルーナと精霊を横目に、フレイルだけは疲れたようなため息をつきました。
「城までは、我が連れて行ってやろう」
 こうしてルーナは、親切な精霊と魔法使いにより、お城の舞踏会に参加することになったのでした。




 さてお城では。今日の舞踏会の主役であるリュシオン王子がしかめっ面のまま、横にいる臣下の話をぼんやりと聞いていました。
「王子、どうです?」
「知らん」
「ええっ! ちゃんと見て下さいよ……」
 言い募る臣下に、王子は不機嫌を隠さない絶対零度の眼差しを向けました。さすがにヤバイと思った臣下は慌てて黙ります。
「今日妃候補を見つけないと、王位継承権を失くすとか、めちゃくちゃだろ」
 実は今日の舞踏会、王子のお妃探しという側面を持っていたのです。そのため先ほどから休む暇なくダンスの誘いをしてくる娘たちからリュシオン王子は逃げ回っていたのでした。
 ダンスくらいと思うかもしれませんが、娘たちの「絶対逃がすものか!」オーラ満載の鬼気迫る様子は、リュシオン王子でなくても逃げ出したいほどでした。
「あのー、あの方はどうです?」
「ケバイ」
「ではあちらの……」
「ペラペラしゃべりすぎだ」
「そ、それではあちらの……」
「馬鹿そう」
 お勧めの娘をことごとく一刀両断にされ、臣下はハァと大きなため息を吐きました。
 そんな時、会場に大きなざわめきが起こり、王子と臣下は顔を見合わせました。
「なんだ?」
「どなたか遅れて到着されたのでしょう」
 臣下の言葉に好奇心を刺激された王子は、なにげなくそちらを見ました。そしてそこに世にも麗しい姫君の姿を見たのです。光を弾いて背中に流れる銀の髪、宝石を思わせる緑の瞳、たおやかな肢体。彼女は一瞬にしてその場のすべての人間の目を奪いました。そして彼女を見たリュシオン王子ももちろん彼女に見惚れてしまったのです。
 麗しい姫君、それはドレスを纏ったルーナのことでした。
 ルーナは物珍しそうに辺りを見ると、自分を見ている人々に無意識にふわりと微笑みました。その花が綻ぶような笑みに、王子の心臓はドクンと大きく震えました。
「踊ってくる……」
「は? え?」
 リュシオン王子はひとこと告げると、席を立って一直線にルーナへと近づいて行きました。





「踊ってくれないか?」
 うっとりとお城の舞踏会の様子を眺めていたルーナは、突然そう話しかけられ、びっくりして振り返りました。
(はわぁ……かっこいい人だ)
 そこには黒髪に瑠璃色の瞳をした、美しい青年が立っていたのです。彼こそがリュシオン王子だと知らないルーナは、不思議そうに彼を見返します。
 そんな彼女にフッと微笑みかけると、リュシオン王子は彼女へと手を差し出したのです。
「あ、あの……」
「いいから手を」
「は、はい」
 半ば強引に手を取られ、ルーナは戸惑いながらもリュシオン王子のリードで踊り始めました。
 類いまれな美しい男女のダンスに、周りの人間たちはダンスを止めて彼らをうっとりと眺めています。
 ルーナは憧れのお城の舞踏会で踊れることに夢心地になりながらも、不思議そうに兄姉たちの言葉を思い出していました。
(うーん、虫っていないよね? もう退治されちゃったのかな?)
 やはり大きく間違っているルーナでした。
 そしてそんなルーナの脳内を知る由もないリュシオン王子は、彼女の視線に内心ドキドキしていたのです。
「お前の名は?」
「えっと、名前ですか……」
 踊りながらそう聞かれ、ルーナは口ごもってしまいました。
 今日彼女が舞踏会に参加しているのは、家族には内緒なのです。ここで名乗ってしまえばひょっとしてそれが家族にばれてしまうかもしれません。
 うーっと困ったように詰まるルーナでしたが、そんな時救い主が現れたのです。
 突然、煌びやかなシャンデリアの明かりが消え、真っ暗になったダンスホールに招待客たちのざわめきが起こりました。
 すると真っ暗な中、今度はある一角だけが青白い光に照らされたのです。灯りを求めるように、その場にいた全員の視線がそちらへ集中しました。
「なに?」
 ルーナも他の者と同じく目をやると、突然光の中に一人の青年が現れたのです。
 金茶色のふわりとした髪と鮮やかな青緑色の瞳の青年は、ルーナの隣に立つリュシオン王子と並んでも遜色ない美青年でした。
(綺麗な人……なんか色っぽいし?)
 ぼんやりとルーナが思っていると、横にいたリュシオン王子が大きな声で叫びました。
「お前は、魔王カイン!」
(ま、魔王?)
 恐ろしい魔王の出現に、ルーナは驚いて震え上がります。すると魔王は声に引かれるようにしてリュシオン王子へ顔を向けました。
 リュシオン王子を見ると、フンッと鼻で笑い、魔王は次いで隣にいたルーナへと視線を移しました。 すると突然大きく目を見開いたのです。
 彼は飛ぶように数歩で移動すると、ルーナの目の前へと軽やかに着地しました。
 そして彼女の前で片膝を付くと、恭しく彼女のその手に口付けを落としたのでした。
「えぇっ!?」
 驚くルーナに魔王はあでやかに微笑むと、色香漂う流し目を彼女へ向けました。
「姫よ、我のものにならないか?」
「「!!!」」
 魔王の言葉に、ルーナとリュシオン王子は衝撃のあまり言葉もありませんでした。が、いち早く立ち直ったリュシオン王子は、ルーナを両手に抱えると噛み付くように言いました。
「これは俺のだ!」
 すると今度はリュシオン王子から魔王が彼女を取り返し、その腕に抱きこみます。
「どんな妄想だ? 痛い奴だな」
「なんだと!」
「真実だろうが」
 ルーナは二人の青年の間でキャッチボールのボールのように交互に抱きかかえられ、訳もわからずただただ目を回していました。
「貴様、今日こそ決着つけてやる」
「フッ……望むところだ」
 漸く二人に離されルーナがホッとすると、彼らは彼女から離れて戦闘を始めたのです。
 ルーナは呆然としつつも、防衛本能に従って彼らからそっと後ずさりました。遠くからあちこち破壊しながら戦う二人を眺めていると、不意にルーナは、隣に誰かが立つ気配を感じ振り返りました。
「あっ」
 驚きの声をあげたルーナに微笑みかけたのは、肖像画でしか見たことのないこの国の王様だったのです。
 堂々とした体躯の美丈夫である国王陛下の登場に、ルーナは慌ててドレスの裾をつまむと、腰を折って挨拶をしました。
「ほぅ、ガキ共にはもったいないな」
「はい?」
「よしどうだ? 俺の嫁にならんか?」
「は……へ?」
 国王陛下の突拍子もない言葉に、ルーナはポカンと口を開けてしまいました。
(それなんて冗談?)
 思わずツッコミをいれたルーナでしたが、国王陛下はニヤリと笑うと、彼女の細い腰にその手を回して抱き寄せました。
「えっ、あのっ」
 ワタワタと焦るルーナに、国王陛下は渋いおじ様フェロモン全開で囁きました。
「いっとくが本気だぞ?」
 兄姉たちに温室で純粋培養されたルーナに太刀打ちなどできるはずもありません。彼女は真っ赤になるとふにゃりと腰砕けになったのでした。
 このままではお持ち帰りされそうな勢いでしたが、今度もまた救世主は現れました。それも二人です。
「「なにしてやがる、このくそじじい!」」
 戦闘の最中だったはずの王子と魔王は、目敏くルーナの危機を感じ取ると、一時停戦をして駆けつけたのでした。
 漁夫の利を狙っていた国王は、闖入者たちに「チッ」と舌打ちを返しました。
「ガキはガキ同士二人で遊んでればいいだろうが」
「黙れじじい! 年を考えろ、年を!」
「まったく目障りな。息子共々滅ぼしてやろう」
 どうやら王子対魔王の戦いは、国王が参戦して三つ巴になったようでした。
 ルーナはその場から避難する人々と同じく、三人から距離をとり、またしても何故か始まった戦闘を見守ることになりました。
(なんなのこれ? お城の人は喧嘩好きなのかしら……)
 首を傾げるルーナの隣に、ふわりと優しく風が起こります。それは彼女の良く知る精霊の気配でした。
「風姫さん」
「ルーナ、そろそろ家人が戻ってくるぞ」
「えっ、もうそんな時間?」
「ああ。送ってやるから帰るぞ」
「うん」
 精霊の言葉にルーナがコクンと頷くと、精霊は微笑んで彼女をそっと抱きしめました。
「どうじゃ、楽しかったか?」
「うん。でもなんかお城って怖いところだね」
「そうじゃな。愚かしい人間共だ」
 ルーナの返事を待たず、精霊は彼女をさらってその場から消えました。
 しかし争いの根源であるルーナがいなくなったことも気づかず、三つ巴の争いは暫くつづいたのでした。






(それにしても、なんか魔王とか、国王陛下とか、色々すごかったなぁ……)
 自宅に帰り着いたルーナは、今日の出来事をそんなふうに振り返りました。彼らの争いの原因が自分だとは露ほども思ってはいないのです。
 そして舞踏会に参加できたことに満足したルーナは、ベッドに入りスヤスヤと眠りにつきました。
 ちなみに三人のことは、ルーナの中で争い好きの謎の人としか認識されていなかったのでした。



おわり














「「「って、おわるんじゃねぇ、ごるぁ!!!」」」
 どうやら終わりが気に入らない者が若干いるようでした。
「おとぎ話じゃねーだろ! なんだこの終わり方は!」
「どこがシンデレラ? かぼちゃの馬車は? ガラスの靴は? なめてます?」
「折角若い娘と絡むんだから、ここまできたらもっと続けろよなぁ」
 あちこち満身創痍の三人が、なにやらほざいております。そんな彼らの前にくるくると小さな竜巻と共に現れたのは、ルーナの仲良しの精霊でした。
「うるさい人間共だのぉ」
「むっ! おまえよくもルーナをさっさと連れてったな!」
「フッ……気づかなかったおぬしが愚かなのであろう? 王子よ」
「ぐっ……」
「精霊如きが小賢しい」
「おやおや魔王よ。その小賢しい精霊如きにルーナを奪われたのはどこの誰かのぉ?」
「うくっ……」
「精霊でしかもおまえ女だろう……。種族も性別も超えての愛かよ。やめとけやめとけ」
「中年、子持ちは黙っておれ。最近下腹がやばいのではないか?」
「おまっ……それは言っちゃいかんだろ!」
 三人三様にダメージを与えると、精霊は最後に笑顔でトドメをさしました。
「ルーナはのぉ。おぬしらのことをただの争い好きの変人としか認識していないゆえ、明日には忘れておろうな」
 精霊はクククッと笑うと、次の瞬間には小さな竜巻になり消え去ったのでした。
 そうして彼女が去った後には、精神的ダメージで屍となった三人が残されたのでした。




- end -

2010/03/18

ブログからの転載です。転載にあたり加筆修正してます。
個人的にはこういうバカなお話が大好きです。