What if 〜Parallel&Playful Story〜.



ルーナの爆弾投下 ...01

※こちらは第四章のパラレルストーリーとなってます。
※あくまで“パラレル”であって本編との関係はありませんのでご了承ください。



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「そうだ、お前俺の妃になるといい」
(はぁ?)
 ぽかんと口を開けるルーナに代わり、硬い声が答える。
「悪趣味な冗談ですね」
「別に冗談じゃないけどな」
「なおタチが悪いですね」
 頭上で繰り広げられる舌戦にルーナは呆気に取られていたが、にこっと笑って口を挟んだ。
「だめだよ。だって私……」
 第三者の乱入にリュシオンとカインは口を噤んでルーナを見た。
 二人の視線が自分に向いたのを確認すると、ルーナはにっこりと極上の微笑みを浮かべた。
「カインのお嫁さんになるからダメなの」
「…………」
「…………」
 ルーナの発言にピタッと同時に時間が止まる、カインとリュシオン。
(あら、仲良し?)
 ルーナがコテンと首を傾げると、今度は同時に二人が口を開いた。
「「は?」」
(ハモってる。やっぱり仲良しかも……)
「何だって?」
 リュシオンが怒気を込めた声音でルーナを問いただす。
「えーと、お妃様にはなれません。だってカインのお嫁さんになるんだもの」
 ねーっとカインを見るルーナ。衝撃から立ち直ったらしきカインは、にっこりと笑って頷いた。
「光栄ですね」
 にこにこと微笑み合う、カインとルーナ。一人取り残された感のあるリュシオンは、眉間に皺を寄せて二人を睨みつけた。
「俺の妃は嫌で、カインに嫁ぐだと……?」
「うん」
 あっさり肯定するルーナに、カインの眉間の皺は深くなる。
「一国の王になる俺より、伯爵家の次男を取るのか?」
「うーん……そういうことになるのかな?」
「そうですね」
 大した問題ではないとばかりに頷き、カインに同意を求めるルーナ。それに頷いた後、カインはにこやかに正反対の表情を浮かべるリュシオンに向き直った。
「それにしても、身分を持ち出してくるなど度量が知れますね」
(うわっ、今のはクリティカルヒットかも……)
「なっ!」
 カインの会心の一撃は、ルーナが思った通りリュシオンに大ダメージを与えた。
(ああ……からかわれた仕返しをほんの少しだけしたかっただけなんだけど、これはかわいそうかも……)
 ルーナの姑息な仕返しは、カインによって予想以上の効果を発揮していた。
「そんなに言うなら、身分以外でケリをつけてやろう……表へ出ろ!」
「折角ですが遠慮させていただきます。先ほども申した通り、王子に向ける剣はございません」
「ふざけるな!」
「ふざけてるのはそちらでしょう?妃などと……
 ま、それで振られているのですから仕方ないですけどね」
「くっ……」
(ま、魔王だ。傷口をぐりぐり抉ってる)
「カ、カイン……」
「なんですか、ルーナ?」
「あの、その……」
(ひぃぃっ、怖いんだけどっ!)
 にっこりと美しくも邪悪な微笑みを向けられ、リュシオンを庇おうとしたルーナは何も言えずに視線を逸らしてしまった。
 そのままリュシオンの横に近づくと、小さな声で彼に抗議した。
「リューのばかぁ! なんでカインをからかうとかするのよ!」
「いや、つい……」
「つい、じゃないわよ!さっさと冗談だって言っちゃいなよ」
「はぁ……」
 そんな二人のやり取りに、魔王(カイン)はフフッと微笑む。だがその微笑みに、残る二人はビクビクと身体を震わせた。





「まぁ、冗談はこのくらいにしておきましょうか」
(精神的に追い詰めといて、冗談とか笑えない……)
「そ、そうだよ。うん。カインのお嫁さんになるっていうのも冗談だしー」
「そ、そうか。ま、俺も冗談だったんだが」
「ですよねー」
「ああ」
 冷や汗を流しながら仲良く頷き合う、ルーナとリュシオン。
「冗談ではなくても、僕が負けるとは思えませんけどね」
 カインはそう言うと、ルーナに「ね?」と輝くような微笑みを向けた。
 魔王スマイルとは正反対の神々しい微笑みを直視したルーナが真っ赤になったのは言うまでもない。




(魔王は倒されるって相場が決まってるんだ。今にみてろよ!)
 精神面で散々甚振られた一人の王子は、その胸に魔王討伐を決意したのだった……。


- end -

2009/12/24

ブログからの転載です。若干修正はいってます。