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レグルスの素敵な朝!?




「ふにゃぁ〜」
 気の抜けるような声と共に、伸びてきた華奢な手の平がレグルスの柔らかく艶やかな被毛を撫でる。
 彼の身体に滑らされた手は、やがて前足へと伸ばされ、ついにその先端へと辿り着いた。そして目的のものを見つけたとばかりに、柔らかい肉球をふにふにといじり出す。
(……またか……)
 いささか諦めを込めたため息を零し、レグルスは未だ彼の肉球を寝惚けながらもいじり倒すルーナを見た。
 視線を巡らせてみれば、彼女を挟んで反対側にシリウスが腹這いになって安らかな寝息を漏らしている。
(シリウスにも肉球はあるはず……なのに何故だ!)
 隙あらば肉球をふにふに三昧されるレグルスは、同じように肉球を持ちながらも、さほどいじり倒されるわけではないシリウスへと疑問を向けた。
 とはいえ、最近では肉球を触られることにも慣れつつあるのだが。
「んー……おはよぉ、れぐちゃん」
 ルーナはパチリと目を開けると、すぐ目の前にある愛らしい子猫――レグルスにふにゃりと微笑んだ。
 そしてとろけるような眼差しを向けた後、ぎゅっと彼を抱きしめ、その口にちゅっとキスを落とす。
「――っ!」
 思わずピンッとしっぽを立てたレグルスに、ルーナはもう一度微笑むとゆっくりと身体を起こした。次いで彼女はレグルスとは反対側に腹這いになっているシリウスへと声をかけた。
「しぃちゃん、朝だよー」
 未だすやすやと寝息をたてている子犬――シリウスに苦笑しつつ、その身体をゆっくりと揺する。
「む……朝か……」
 くわっと大きく口を開けて欠伸をすると、シリウスは眠そうにそう言って身体を起こす。
「どうかしたのか、レグラス」
 しっぽをピンと立たせたまま固まっているレグルスを見て、シリウスは不審そうに声をかけた。
「な、なんでもない!」
 慌てて答えるレグルスに首を傾げたものの、シリウスはすぐに意識をルーナへと移し、ベッドから降りた彼女の後をしっぽを振って追いかける。
「うむ、これは肉球を提供する見返りか? ……どちらにせよシリウスには黙っておこう」
 寝台に残ったレグルスは、そう独りごちるとニヤリと笑った。


- end -

WEB拍手として書いたものです。

2011/12/17 改訂