リセット Side Story
大切な君に。...08
ルーナの誕生日記念で書いたものです。
■リュシオンの場合
(10日か……)
魔力を込めた石に魔法をかけることによって作られた暦。それを見ながらリュシオンは眉間に皺を寄せた。
「あと三日だと……どう考えても時間がないだろ」
忌々しげに吐き捨てつつ、リュシオンは自室を行ったりきたりと歩き回る。
「ドレスか宝石?……そんなものは周りに溢れてるな……てかドレスなんかは今からじゃ間に合わないだろうし。じゃあ小物か? いや本とか? くそっ何を喜ぶんだあいつは!」
埒が明かないとばかりに、乱暴にソファに腰掛けたリュシオンは、ふと思いついたように自分の腕輪に目をやった。
彼のそれは、ルーナに贈ったペンダントと対になる魔道具だ。
「いっそ直接本人に聞けば……」
多少負けた気がしないでもないが、背に腹は変えられない。リュシオンは覚悟を決めて自分の腕輪へと手を伸ばした。
が、通信のために腕輪の宝石に触れようとした彼は、ふとその手を止めて声をあげた。
「これだっ!」
大きく叫ぶと、リュシオンは珍しくご機嫌な様子で控えていた家令を呼ぶ。
「殿下、いかがいたしましたか?」
「いますぐ宝石商を呼べ! そうだな、魔力が込めやすい上等の宝石を用意させろ」
「魔力の……ですか?」
「ああ。ちょっとした護符を作る」
「御自らで、ございますか?」
「ああ。そうじゃなきゃ意味がないからな」
「かしこまりました」
リュシオンの言葉にうなずいて深々と頭を下げた家令は、一礼した後すぐに部屋を出る。そうしてドアを閉めたところで、彼は耐え切れずににんまりとした笑みを浮かべた。
(御自らの手で……なるほどルーナ姫様への贈り物ですか……)
クスクスと漏れそうになる笑い声を、彼は白手袋に包まれた拳で押さえ込む。
数日前のリュシオンの誕生日から、彼が嬉しそうにハンカチを手にするところを見ていた家令は、すぐに彼の考えが読めた。
(手作りにこだわったわけですね。ではあそこの店が最適でしょうな)
家令は頭の中で宝石商のリストアップを終えると、軽い足取りで王子宮の廊下を歩いていった。
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兄姉たちの場合
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カインの場合
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フレイルの場合
- end -